別行動から久しぶりに会った二人 / バレクラ / 文庫ページメーカー
ギャランドゥが金色になった。
「……何でよりによって今来るんだよ」
「あんたがめずらしく大人しいからな」
もそ、とその奔放なギャランドゥが動き、人間の顔がこちらを向く。ちょうどバレットの股座にうつ伏せになるようにしたクラウドの顔は、いつもよりもだいぶ面白がっていた。
「構いたくなったんだ」
「構わんでいい、構わんでいい。朝も言ったろ、オレぁ腰が痛え」
「昨日のせい?」
「……たぶんな」
はー、とため息をつきながら、バレットはそのもふもふ頭を撫でてやる。
そう、昨日はしばらく別行動だった二人がようやっと合流できた日だった。しかも野宿ではなく、きっちり個室が取れる宿屋で、だ。好き合っている大人が二人っきりとなればする事は一つで、ここのところしばらく会えなかったせいで溜まりに溜まった欲をぶつけた結果、バレットの腰が翌日——すなわち今日、悲鳴をあげる羽目になった。
仲間たちには何とか適当に説明し、買い物は代わりにすませて貰って、回復魔法を使うほどではないと部屋で休んでいるのだが、どうもその大人しくしている様子がクラウドにとっては物珍しかったらしい。昼寝から目が覚めてみれば、バレットの股座を枕にしてしっかりくつろいでいた。
「お前が興奮剤なんて使うから」
「あんたも乗ってきたろ。むしろノリノリだった」
「……まあな、あん時はな、しょうがねえ」
「うん、しょうがない」
クラウドは頬に添えてやった手に気持ちよさそうに擦り寄る。その様子はチョコボというよりネコ科のそれだ。
「それにしても」
その金色のネコは、うつ伏せになったままじっとバレットの腹を見つめる。
「あんたの筋肉すごいな」
「いやいつも見てんだろ」
「この角度で見たことなかった」
それまで身体の脇に垂れていた白い腕が持ち上がり、さわ、とバレットの見事に割れた腹筋に触れる。ぺたぺたと適当に触ったあと、なにを思ったか、ついっと割れ目を指でなぞり始めた。
「んぉっ」
「何食ったらこうなるんだ」
「待った、何してんだお前」
「観察」
観察って手つきじゃねえぞ、という一言は、白い指が優しく臍を触り始めたことで呻き声に変わった。魔晄色の瞳が笑い、今度は左手が脇腹の筋肉に触れる。
「すごいな、脇も筋肉だ」
「お前、ほんと、いい加減に——んぐぅっ」
このままだとたどり着く結末は一つだ。角度を変え場所を変え、絶妙に好き勝手動く指に呼び起こされる本能を、なけなしの理性で押さえ込む。
だが、バレットの身体は思いの外本能に忠実だった。
「……? 何で勃ってるんだあんた」
「お前のせいだよ!!」
「俺何もしてない」
「しただろうがよ!!」
わざとらしい一言に思わず叫び返したら、にぃ、とクラウドの口元が艶やかな弧を描く。
「どうするんだこれ、結構がちがちだぞ、バレット」
やはり猫だ、もしくは猫にまつわる何かだと、バレットの痺れた脳がそんな拙い感想を抱くも、言葉となっては出てこない。代わりに出てきたのは、「ああもう」という諦めのそれだった。
「どうするもなにも、お前、責任とれ」
「しょうがないな」
「お前が動けよ」
「わかってるよ」
いつになく楽しげなクラウドの白い手が下穿きに伸びたのを見て、バレットはこりゃ明日も腰痛かねと本日数度目かの溜息を吐いた。