[2019/01/22]リブクラ

はしたないクラウドちゃん / リブクラ / 文庫ページメーカー

「はしたないですよ」
 部屋に入るなりの光景に苦笑を交えてそう言ったら、言われた当人は「べつにいいだろ」となんとも気怠げな返事をしてきた。
「あんたしか来ないんだし」
「まあ私以外が来たらちょっとびっくりですけどね。風邪引きますよ」
 見下ろしたベッドの上、ただしどけなく横になっている身体には辛うじてブランケットが引っかかっている程度で、正直なところとても目のやり場に困る。それに、日焼けの気配が微塵もない肌の所々に散りばめられた痕が更に際どさを強調してきて、ようやく落ち着いたリーブの欲を刺激する。
「それに、もう一回シャワー浴びる羽目になりそう」
「年の割に旺盛だな」
 しょうがない、とクラウドは身体を起こすと、足下にくしゃっと丸まっていた自分の寝間着を引き寄せる。
「あ、着るんですね」
「うん、着る」
「着せてあげますよ、こっちいらっしゃい」
 ベッドに座って手招きをすると、クラウドはのそのそと近づいてきた。その手から寝間着を受け取ると、一糸纏わぬ身体にするりと着せてやる。
「……む。さっきもちょっと思ってたんですけど、もしかしてまた体重減りました?」
 後ろから抱え込んで前に手を回しボタンを留めつつ、ふと気づいたことを口にしたところ、クラウドは「あんたなあ」となぜか呆れた声を出した。
「何でわかるんだ」
「伊達に触ってませんからね。……それはさておき、またお仕事の合間にご飯抜いたりしてるでしょ。だめですよちゃんと食べないと」
 ボタンをすべて留めてしまうと、そのままお腹に手を添えて完全に抱き込んでしまう。肩口に顎を乗せながらさわさわと感触を確かめること数秒、リーブの手が伝えてきた感覚を統合するとやはり「減っている」の一言に尽きた。
「あぁークラウドさんの貴重なむにむに部分が減っとる……ここ好きやったのに」
「だから寝ながら揉んでたのか……じゃなくてそれで言うならあんたも大概だろう」
 今度はクラウドに手を掴まれてぐいと引っ張られた。背中に密着する形になったが、特に逆らわずにそのまま好きなようにさせる。
「あんたもちゃんとご飯食べてないって聞いた」
「だって忙しいですもん」
「俺だって忙しいよ」
「じゃあお互い様ですね」
「俺は丈夫だからお互い様じゃないぞ」
 星の色がちらりと見やってくる。
「あんたには元気に長生きしてもらわないと」
「まあそら勿論そのつもりですけど」
「それじゃあご飯に睡眠、適度な運動だな」
 すっとクラウドが身体をずらし膝の上に横向きに座り直すと、その腕をリーブの首に回してきた。
 もう何度も見ているものではあるが、つい呼吸を忘れてしまう。白く滑らかな陶器で形作ったかのようなクラウドの顔に、更に獰猛とも言える挑発的な表情が浮かんでいたら当然と言うものだろう。
「適度な運動なら今からできるぞ」
 低い囁きが耳を掠め、甘えるようなキスを一つされ、リーブの顔がかっと熱くなる。
「……はしたないですねえ」
 こんなことを躾たつもりはないんですが。
 リーブは苦笑混じりでそう絞り出すと、先ほど自分が留めたばかりのボタンを外してやるのだった。

三度の飯が好き

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