見つめるクラウドちゃん / リブクラ / 文庫ページメーカー
星の色が、じっとリーブの目をのぞき込んでいた。
普通の人間の虹彩とは比べものにならないほど複雑な煌めきが、まるで頭の中を覗き込もうとしているかのように、じっとリーブに視線を注いで離さない。
「——駄目だ、わからない」
だが、その瞳は結局ふいと逸らされてしまった。実に熱のこもった視線だったのだが、どうやら諦めてしまったらしい。
「駄目でした?」
「駄目だった。というか、今までできた例しがないぞ、そんなの。意識してできるものじゃない気がする」
「確かにずっとそうでしたもんね」
うん、とクラウドは頷くと、リーブの膝の上からベッドの上へぼすんと腰を下ろす。そしてそのまま枕の方に倒れていった。
「意図的に思考を読むような能力は、俺の細胞にはないんじゃないか」
「個性なんですかね」
リーブはすぐそばにあったクラウドの手をきゅっと握る。
ジェノバ細胞の話になったのは本当にたまたまだった。正直なぜそんな話になったのかも、あまりに多愛のない話であったせいでリーブ本人も覚えていない。ただ、細胞に備わっているらしい、他人の意思を読む能力をクラウドも使えたりするのだろうか——ということで、先程のようなにらめっこになったのだ。
「ティファには何回か鈍感って言われてるし」
「鈍感ですもんねクラウドさん」
「……リーブにも今言われたし。だから俺にはないと思う」
ふいとクラウドの手が離れた。どうやら拗ねたらしい。
ころんと背中を向けてしまったクラウドを追いかけるようにリーブもまた横になると、その身体を後ろから抱き込む。
「でもま、そんなもの持ってても疲れるだけですし、そのままのクラウドさんが今んとこ一番好きですよ」
「なんだその、少し含みのある言い方」
「それにボク、クラウドさんが何考えてるか結構解りますし」
わざと軽く音を立ててその白い耳に口づける。途端に腕の中の身体がほんの少しだけ跳ねて、耳朶がほんのり色づいた。
「今は、そうやねえ」
耳元で低く囁いたら一気に抱え込んだ体温が熱くなった。いつまで経っても初心な青年に意地悪をしたいという気持ちがむくむくと沸き起こって、冷静な大人の仮面が剥がれていく。
寝間着の下から手を滑り込ませて、滑らかに浮き出た筋肉の凹凸を指でなぞり、ほんの少しだけ息を詰まらせたクラウドの肩口に吸い付く。
「ボクとえっちなことしたい、でしょ」
「っ」
「当たってます?」
完全に馬乗りになってしまうと、きゅっと唇を引き結んだ横顔が視界に入った。
悪い癖が出ている。こういうことをいけないことだと無意識のうちに考えてしまって、堪えてしまう癖だ。何度も何度も教えてきたのに、この子は一向に頑固で、そして愛おしい。
「続きしても良いですか」
色づいた目尻に軽く触れると、また星の色がこぼれ出す。だがその宝石は、先ほどとはまた違った熱で彩られていた。
「——わかるんだろ、聞かなくても」
ぽそりと控えめに呟かれた一言に、それまで辛うじて纏っていた良識のある大人の仮面が完全に引き剥がされた。次の言葉すらどこかに行ってしまって、は、というやけに熱い息だけが外に出ていく。
途端、それまでただ貪られるのを待つだけだったクラウドの瞳が、ほんの少しだけとろりと笑った。なんですか、と促すと、「わかった」なんて低く掠れた声が返ってくる。
「あんた、今、俺をめちゃくちゃにしたいって思ってる?」
「……なんだ、わかるんじゃないですか」
美しく弧を描いた瞳を指の腹でそっと撫でると、リーブは今度こそ、かろうじて残っていた理性を放り棄てた。