ハイクラ / pixiv ※R18表現あり
——汚い豚だと思うようにしている。
「……まだかかるんですか? 早くしてくださいよ」
クラウドは高級そうなベッドに寝そべり、雑誌をめくりながらそう言った。部屋に行っても良いですけど買っといてくださいね、というこちらのお願いを、この豚はちゃんと聞いてくれていたらしいが、もう半分まで読んでしまった。それなりにページ数のある雑誌なのに、時間がかかりすぎだとため息をつく。
「読んじゃったら帰りますよ、おれ」
背中の豚から返事はない。ただ必死な鼻息が聞こえるだけだ。人間の言葉を忘れてしまったんだろうか、いや豚だからしょうがないか、などと至極あっさりと自己完結をしたクラウドは、また一枚ページをめくった。新発売の車種の紹介から、今神羅で開発しているらしい更に新しいモデルの紹介記事だ。たぶん目玉が飛び出るほどに高いのだろうし、クラウドには技術的な面でも一生乗れないかもしれない暴れ馬に、一瞬目が奪われた。
「統括、こういうの持ってたりします? ……持ってないか、そのおなかだと乗っても様にならないですしね」
答えを待つこともなく会話を締めくくると、クラウドは読みかけの雑誌を閉じる。しょうがないから終わるまで待ってやろうの姿勢だったが、どうも統括という肩書きを持つ豚は勘違いしてしまったようだった。
「——っぁ、」
それまでしきりに擦り付けられるだけだった熱を持つ汚い棒が、ゆっくりと尻の肉を割って入ってくる。何してんですかと言う前に、豚はがつがつとクラウドの体を貪り始めた。
「っん、あっ、……ほんと、品がない、っですよね」
内臓をぐんぐんと突き上げられる勢いで、自分でもあまり聴きたくない声がでてしまうが、それでも最後の最後まで罵倒はやめない。止めてやらない。それがクラウドにとって、唯一残された自分らしさだからだ。
最初はそれすらできなかった。その時のことは、思い出すだけでこののしかかってくる豚と自分に腹が立つ。
クラウドはまた手元の雑誌を開いた。されていることに関しては、特に気持ちいいとも痛いとも感じない。気持ちよくないのはいつもどおりだが、痛くないことについては助かると思う反面、この豚との行為をかなり頻繁にしているということを意味しているようで、気分が悪かった。
その反動で更に口が回る。
「おれに、挿れても、まだ終わらないんですか?」
「……っ、待て、もう少し……」
「遅っ。にぶいですね」
がくがくと乱暴に揺さぶられるせいでうまく誌面が読めない。しかも、ぽた、と自分の汗がページに落ちてせっかくのページが滲んでしまった。
はあ、とため息をついて、クラウドはまた雑誌を閉じた。最後まで眺めていたいが、これ以上読んでいたら雑誌がダメになってしまう。
「統括、ストップ」
「なんだ」
「向き、変えてもらっていいですか」
勢いに乗っていた豚の動きを止めいったん抜くと、今度は仰向けにベッドに寝そべる。眼前に汚い顔が広がるのは見なかったことにして、良いですよと腕と脚を広げた。
許可を得た豚がのしかかってくる。視覚がふさがれていることもあってか、圧迫感はさっきの倍だ。そして豚は明らかに先ほどよりも興奮していた。普段後ろからしかさせないからだろう。
クラウドは豚の首に手を回すと、軽く耳たぶを噛んでやった。ふごっ、という本当に豚のような声が上がり、中に入っている異物が更に大きさを増す。
「いつまでも終わらないの、ほんと嫌なので、応援してあげます。雑誌読みたいし」
本当はしたくないんですけど——と、その一言を付け加えるのも忘れない。
クラウドは心中の嫌悪感を押し殺しながら、豚の後頭部をぽんぽんと撫でてやる。代わりに喉から絞り出すのは、後で思い出したら吐きたくなること請け合いの、媚びを全面に押し出した声だ。
「ほら、頑張れ、頑張れ」
「んっぐうう」
「あ、もう少し、ですか? 統括、がんばれ、がんばれ」
クラウドの腰を掴む手に力が籠もる。痕になりそうだと考えただけで虫唾が走るが、彼は敢えて、その手に自分の手を重ねた。
「っあ、あ、統括、がんばれ、もうちょっと、がんばれ」
「ぐっ、で、出る、っうう」
「しょうがないなあ、……頑張った、から、だしていいですよ——っんん」
がくがくと揺さぶられ、ついでに自分の前も弄られて息が詰まる。びくんとクラウドの脚が痙攣したとほぼ同時に、豚の性器が胎の中で震えたのが解った。そういえばゴムをつけていなかったことを思い出したが、出されてしまったものはしょうがない。
かなり長い間押しつけられていた体が離れて、ずるりと中のものが抜き出された瞬間、クラウドははあとこれ見よがしに大きな溜息を吐いた。
「おっそ」
「す、すまん」
「謝るくらいなら、もうちょっと早くする努力してください。……洗ってくるのでタオル借ります」
「大丈夫か?」
「何が。もしおれのことだったら、こっちは兵士なので統括よりは余程丈夫ですよ」
起き上がってベッドから下りた瞬間、どろりと内ももを伝う粘液に顔をしかめながら、裸のまま勝手知ったる室内を歩いてバスルームに行った。寮の何倍も綺麗で広い浴室に入ると、ノブを捻って熱い湯を出す。
クラウドはこの瞬間が嫌いだ。自分の後ろの孔を広げて、中にまき散らされた残滓を自分の指で掻き出すこの瞬間が何よりも嫌いだ。たまに痛いし、少しでも残っていたら次の日おなかが痛くなる。最近はコツを掴んだのと、ゴムを使わせているから腹を下す回数は少なくなったが、隊の中でのクラウドのイメージにはすでに、「チョコボ頭」に加えて「腹痛持ち」がくっついてしまっていた。ただでさえ小柄で年も下なのに、馬鹿にされる要素が加わったのは、何とも許し難かった。
すべて綺麗にして、ついでに高そうなシャンプーもガンガン使ってやる。泡も何もかも全部洗い流してしまった後で、はあ、とまた溜息が一つ出た。
「……何やってるんだろうな、おれ」
自嘲気味に落とされたその一言は、ごぼごぼと泡を飲み込む排水口に、瞬く間に流されていった。