捜査官セフィロス×シリアルキラークラウドちゃん / 文庫ページメーカー
彼には何が見えているのか、知りたいと思ったことはないと言ったら嘘になる。
隔離された部屋、床に固定された椅子と机、机の上に広げられた幾枚かの写真。そしてその写真達を、少しだけ首を傾げてじっと見つめる、白皙の青年。いつもの光景のなかにいる自分も、いつも通りにその青年を——拘束具に包まれた青年を見つめている。
「……ん」
青年の形の良い唇が僅かに音を漏らした。何かあったかと先を促すと、カラーのコンタクトレンズでも填めたかのように不思議な彩りをした虹彩が、好奇心を滲ませる。
「埋めたのか」
「ああ」
「全員?」
「そうだ」
「その気はあったのか」
「何が言いたい」
意図が見えないやり取りに対して端的に問うと、彼は写真から目を離さず、またこちらの顔も見ずに言った。
「埋葬してるつもりなんだ、たぶん」
「なに?」
「綺麗に並んでるし、手も組ませて、服もちゃんとしてる。隠そうとしただけじゃない」
「……」
「そこまでまだぶっ飛んでない奴だ。それなりに恥も外聞もあるし、見た感じ教養もそれなりだな。——近所のヤク中は外していいよ」
よくわかったな、という言葉はこの青年に対しては使い古した言葉だ。こいつにかかればたった一枚の家族写真からでも、その家の秘密を暴けるだろう。それでもセフィロスは素直に感嘆の言葉を口にした。
「このあたりを知っているのか」
「知らないよ。見ればわかる。……あとは現場に行きたいけど」
「駄目だ」
「しょうがないな。また新しい証拠品でも出たら来てくれ、捜査官」
解ったと手を振り椅子を立つと、写真を纏めて封筒に入れる。
「またな。クラウド・ストライフ」
うん、と彼は——人の形をした殺人鬼は、ただ穏やかに笑顔を返した。
「待ってるよ、楽しみにしてる」