[2018/07/17]セフィクラ

二人の旅:出立の日 / セフィクラ / 文庫ページメーカー

 なぜ星が自分を迎えとして選んだのかはわからない。ただ、おそらくは意志疎通が可能で、かつライフストリームからサルベージできる程度には混ざり合っていなかったということが理由に含まれているのは違いないだろう。
 セフィロスは、仔らに旅支度を調えてもらっているクラウドを遠巻きにじっと見ていた。病衣のようなそれではなく外を出歩けるような服、毛布、靴などを次から次へとやってくる仔らがてきぱきと着せていく。
 最後に仔らが作った『お守り』の小さい袋を首にかけてもらったクラウドは、一人一人の頭を撫で、寝癖を直してやり、泣いている仔の顔を拭ってやってようやく、セフィロスの方を見た。
『いこう』
「ああ」
 クラウドが白い腕を伸ばし、セフィロスの首に絡める。膝の下に手を差し入れ、抱え上げると、その日の光に満ちた部屋を出る。仔らがわらわらとその後に続いた。
 森と建物が混じり合った廊下を抜け、蔦に覆われた門へ向かうと、そこには案内してくれた大人びた仔と狼、そして四足の首のない獣のような機械が待っていた。
「抱えながらの移動は大変でしょう。よかったらこれを使ってください」
「操作は?」
「母の思考にリンクします。おそらくあなたにも扱えると思います。かつて、母の作用が無機物にも及ぶかといった実験で生み出されたものですが、とっておいてよかった」
 セフィロスは言われるまま、クラウドを機械の獣の背中に据え付けられていた椅子のようなものに座らせる。とたん、それまで置物然としていた機械の獣は、まるでうなり声にも似た駆動音とともにゆっくりと立ち上がった。
「できるか?」
『できる。わかる』
 よかった、と仔は笑った。
「そして、こちらもよかったら——いえ、できればですが、兄さんも連れていってくれますか」
 仔の言葉と同時、足下で大人しく座っていた狼がセフィロスを見た。最初に会ったときも感じたが、賢しそうな瞳をしている。
「兄さんは僕たちとは違って特別なんです。どう特別かは、僕たちには教えてもらえませんでしたが、このときのために、兄さんは生き続けてきました」
「……断る理由はないな」
「ありがとうございます」
 狼が腰を上げ、セフィロスの足に身体をすり付け、そしてクラウドの足に鼻先を押しつける。そして、門の前に勢ぞろいした仔らと向き合った。
「……僕たちにできることはもうありません」
「母をよろしくおねがいします」
「まま、いってらっしゃい」
「ままー」
 口々に上がる声に、クラウドはうなずいた。セフィロスもまた、様々な大きさで、様々な形をした仔らを——金の髪の仔らを見、そして言った。
「お前達の母は、確かに預かった。行ってくる」
「ええ。良い旅を」
 いってらっしゃい、と口々に上がる声を背中に受けながら、二人と一匹は旅に出た。

三度の飯が好き

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