リーブさんの企みでお花が生えちゃったクラウドちゃん / リブクラ / 文庫ページメーカー
彼の片目から生えた花は、甘い香りを周囲に振りまきながら、クラウドの動作に合わせてその花弁を揺らしている。本人は痛みもないのか、その花には何の注意も払っていないように見えた。ただ、床に置かれたクッションに身体を預け、時折その風景を変える天井に映し出された空を眺めている。
——あの花を取ったら元に戻るのだろうか。
バレットの脳裏を、そんな思考が掠めた。
「なあ、クラウド」
相変わらずぼんやりと上を向いていたクラウドが、その声に反応して視線を寄越す。バレットは目の前に膝をつくと、その肩に手を置いた。
「その花、痛くねえのか」
「……いたくない」
「変な感じもねえのか?」
「……」
ぱちり、とその片目が瞬きをした。おそらく肯定なのだろう。
じゃあ、とバレットは手を伸ばす。
「その花、触っていいか」
だがそれはゆらりと持ち上がった白い手が止めた。
「いや」
「嫌って、ただ触るだけでもか?」
「いや」
首を振るクラウドのその動きに合わせて、薄青の花弁がひらりひらりと揺れる。良いじゃねえかよと更に続けたら、今度は両腕で顔を覆ってしまった。
「クラウド」
「いや」
そのまま、彼はクッションに顔を埋めるようにしてうずくまる。いつも反応が薄い彼がここまで嫌がるというのは今までになかったことだから、どうやら相当に嫌がっているらしい。
「わかった、わかったから、もうしねえよ」
バレットはクラウドから少しだけ距離をとる。
だが、仕事を終えたリーブが様子を見に来るまで、クラウドはずっとそのままだった。