TLで盛り上がった正宗の鞘 / セフィクラ / 文庫ページメーカー
「ァ——」
首を掴まれ足が浮く。間髪入れずに身体の中に生まれる違和感、そしてそれを自分で咀嚼する暇もなく無理矢理外に引きずり出される感触。
そのすべてが何もかも嫌だった。 気持ち悪い、痛い、苦しい、全部をまぜこぜにして脳に叩きつけられるのはたまったもんじゃない。普通に前線に立って怪我をした方がいいとすら思える。
そして、すべてを抜き出された後まるで用済みであるかのようにそのまま放り捨てられるのも心底嫌だった。そりゃあ役に立たないだろうしただの消耗品には違いないが、それでも一人の人間として扱われないのは誰しも腹が立つ。特にその相手があこがれてやまなかった英雄であればなおさらだ。
「っは、はぁ、……ひゅっ、」
「衛生兵。回収しろ」
「はっ」
——ああ、もう、「これを」という言葉すら言われない。
モノ以下かよとブレて霞む視界でなんとか睨むが、彼にそんな仕打ちをした白銀色の英雄は、目線の一つもくれなかった。くれたところで、陸で溺れる魚か何かのような有様になっている彼には何一つの助けにならないことには違いないが、それでもそれなりの対応ってものがあるだろうと思わずにはいられない。
確かに英雄のようになりたかったし、英雄の隣に立ちたいと思ったことはある。
でも、それはこんなただの道具としてなんかでは決してない。
「『鞘』回収完了しました」
「納刀までには回復させろ。剥き身でうろつかせるわけにはいかん」
「了解」
頭上で交わされる幾つかの言葉に舌打ちしながら、クラウド・ストライフは——正宗の鞘に運悪く選ばれてしまった少年は、静かに意識を手放した。