デート

エタバン後 やることやってんのにデートでガッチガチになるキンちゃんが見たい  ガチガチであった。 ここに来るまでどう歩いてきたのか記憶にないし、なんならさっき頼んだはずの料理も記憶から消えている。多分やらかした時の軍法会…

おひるね

かりょうびんがちゃんとキンちゃんの特に中身のない昼寝のはなし  ちゃちゃちゃちゃちゃ、と音がする。 ほんの少しおはじきが入った袋を床へ落としたときのような音が、忙しなくこちらへ近づいてくる。キーンはリズミカルなその音に気…

店の中

帝国if どこかのお店の中で  外で鳥が鳴いている。 夕暮れ時だった。外では風が吹いている。強い強い風だ。きっと今日は嵐になるだろう。膝の上の猫とも狐ともつかないいびつな毛むくじゃらをぼんやりと撫でながら、目の前のカウン…

なぎ

エタバン後 ぺーぶいぺーいったはなし バカのつくカップルにしかならねえ たすけてくれ  凪だ。 そこだけ音が消えたようだった。乱闘のさなかにあって、ただその周辺だけ無音の世界として切り取られているように見えた。腰を深く落…

戦の月

たぶんエタバン後かその直前 戦場での中身のないはなし  珍しい月の生まれなんですね、とは今までの人生で何度も言われたことだった。 もちろん同じ戦神の月生まれの人間なんていくらでもいる。珍しい、というのは商人界隈の間でのこ…

狐と狼

どうぶつif いいよね…… という気持ちでやった  理不尽な眠りから覚めたら、周囲はすっかり様変わりしていた。不気味なほどに白い壁に低い空、つるつるした爪の立てづらい大地、そして冷たくて鉄臭いまっすぐなツタ。厄介なのはこ…

壁と背中と伊達眼鏡

これのつづき 最近読んだものに影響されます なろう系っていうんですけど  まただ。またこうだ。またこの光景を見ている。 ぼやけた視界の中で喉を灼きながら、浅い呼吸を繰り返す。もうだいぶ前に持っていられなくなった魔道書は足…

しりもちの日

初めて会ったときの話 お腹がすいたときに書きました 「わぷぅ」 突然鼻が潰された。予想もしなかった衝撃にたたらを踏み、そのままべったんと尻餅をつく。腕に抱えたカーバンクルがギィと文句を言ったのが聞こえたが、尻から伝わって…

空のふわふわ

エタバン後 いつぞやの進路に悩んでいたモブが遊びに来たよ Q. むーたんは離れると消えるのでは? A. 細けぇことはいいんだよ  曰く、巴術はありとあらゆる自然現象を算術で表現する学問である。 曰く、巴術士は宝珠の神秘を…

冬の終わり

帝国if 片付いた後片付けに来たよ 春の兆し  帝都の冬は寒い。見栄っ張りの貴族の鼻がもげた昔話があったが、帝国の民はそれが実話だと身をもって知っている。実際、外に出している箇所はすべからく刺すような痛みに襲われるから、…