海の雌狐

モブ、えらいことに遭遇する黒渦団のおしごとのはなし  ――えらいことになってしまった。 落ち着きなく左右に視線を遣る。見慣れない木造の内装に古ぼけたランプ、揺れる仄暗い光に照らされるのは、広い空間を仕切る鉄格子と、自分と…

あかるいみらい

モブのある意味横恋慕の話 「――えっまた来ちゃったの? あんたも好きだねえ」 取調室にしてはやけに呑気な声だった。ぼろっちい木のテーブルの上に落としていた視線を上げると、部屋の入り口には赤と黒の制服を着た優男が立っていた…

孵卵器は雛を抱く

本当に最初の頃の話 モブのおにいさんと 「なんで?」 それは単純な疑問だった。皮肉でも挑発でも嘲りでもない、ただただ純粋な疑問。氷が溶けたら水になることを初めて知った子供がするような、純粋な問いかけ。未だ子供と言っても差…

空のふわふわ

エタバン後 いつぞやの進路に悩んでいたモブが遊びに来たよ Q. むーたんは離れると消えるのでは? A. 細けぇことはいいんだよ  曰く、巴術はありとあらゆる自然現象を算術で表現する学問である。 曰く、巴術士は宝珠の神秘を…

とある新人の場合

モブ視点 悩み事を相談しに来たよ エタバン後  小隊の隊長は怖いと聞いていたがまさかここまでとは思わなかった。 扉越しでも聞こえてくる罵声に怒声、さらには何かを蹴り飛ばすような音すらする。内容はよくわからないが、無茶な任…

戦場の冒険者

南方ボズヤ戦線にて モブがいろいろする ちょっと痛い  手に伝わる感触は今までで一番生々しかった。 一瞬髪の毛が擦れる触感に硬いものを砕いた感覚、そして中途半端に柔らかい手応えが、短い悲鳴とともに手から脳へと伝わってくる…

🦈

晩ご飯と朝ご飯と晩ご飯(隠喩)の話後日窓から飛び降り事件に繋がるのであった  人の体温は心地が良い。他人の鼓動も聞いていて落ち着く。抱きつくのにももってこいだ。もちろんやることだって気持ちが良い。 だから毎朝、男の腕の中…

🧱

帝国if 施設にてモブと  それはいつもサイズの合わない服を着ていた。 都市近郊に比べて物資が潤沢ではないこの施設では、種族ごとの服を確保するのは難しい。時折やってくる同盟軍の使節や家族達にお願いしてなんとか賄っても、や…